No. 03   /   経営の数字

美容室の損益分岐点を
実数値で計算する手順

2026-05 / 実践レポート

去年の確定申告の途中で、ふと気になって損益分岐点を出してみた。それまでは「だいたい月60万売れていれば食える」くらいのざっくり感覚で店を回していた。

でも実際に数字を入れて計算してみたら、思っていたより10万以上ズレていた。家賃と材料費の比率を一度きちんと見るだけで、目標売上の解像度がまるで変わった。

この記事では、ひとりサロン・小規模サロンを前提に、損益分岐点を実数値で計算する手順をまとめる。電卓1つあれば15分で出る。

そもそも損益分岐点とは何か

損益分岐点とは、売上と費用がちょうど等しくなる金額のこと。これを超えれば黒字、下回れば赤字になる。

美容室の場合、固定費(家賃・人件費・通信費など)と変動費(主に材料費)に分けて考える。式はシンプルで「固定費 ÷ 限界利益率」で出る。

固定費と変動費の分け方

固定費は、客が来ても来なくても発生するもの。家賃、リース代、保険料、通信費、自分の生活費(役員報酬や事業主貸)が中心だ。

変動費は、施術が増えるほど増えるもの。カラー剤・パーマ液・シャンプー材料・タオルクリーニングなどがここに入る。

限界利益率という考え方

限界利益率は「(売上 − 変動費) ÷ 売上」で出す。売上が1円増えたとき、いくら手元に残るかの比率と考えるとわかりやすい。

美容室では「売上 − 材料費」で近似していい。カラー専門店なら材料費率が低いぶん、限界利益率は高くなる傾向がある。

損益分岐点を出す3つのステップ

計算は3ステップで終わる。電卓でも、後で紹介するPLツールでも、やることは同じだ。

ステップ1 固定費を全部書き出す

通帳とクレカ明細を1年分眺めて、毎月必ず出ていく金額を列挙する。これが意外と漏れる。

家賃、水道光熱費、通信費、ソフト代、保険料、自分の生活費、借入返済の元本部分。ここまで含めて固定費だ。

ステップ2 限界利益率を出す

過去1年の売上と材料費の合計から計算する。月ごとに振れるので、年間で出すほうが安定する。

カラー専門店の材料費率は8〜15%が一般的なレンジ、総合サロンなら10〜18%が目安になる。これより極端に高い・低い場合は仕入の管理を見直すサインだ。

ステップ3 固定費を限界利益率で割る

あとは固定費を限界利益率で割るだけだ。たとえば月の固定費が40万、限界利益率が88%なら、損益分岐点は約45万5千円になる。

この数字が「最低限これだけ売らないと赤字」というラインだ。生活費を固定費に含めているので、出てきた額を下回ると自分の手元には1円も残らない。

実数値でやってみる(ひとりサロンのケース)

具体的な数字で動かしたほうが腹落ちする。ひとりサロン・カラー専門寄りの想定で計算してみる。

月の固定費38万、年間売上が客単価8500円×月100人×12ヶ月で1020万、材料費率を12%とする。

月85万売れていれば、損益分岐点の43.2万円は楽に超える。残りの約40万円が、来期の投資や貯金に回せる原資になる。

比較してわかること

材料費率が違うだけで、損益分岐点はかなり変わる。同じ固定費38万でも、限界利益率が変われば必要売上は1割以上ぶれる。

項目カラー専門寄り総合サロン
材料費率の目安8〜15%10〜18%
限界利益率の目安85〜92%82〜90%
固定費38万円のときの分岐点約41〜45万円約42〜46万円
数字の振れ幅小さいやや大きい

カラー専門に寄せたほうが分岐点の振れ幅は小さくなる。商品構成がシンプルなぶん、材料費の管理がしやすいからだ。

自分が毎月チェックしている理由

月初に固定費の合計を確認し、損益分岐点を更新するクセをつけている。家賃改定や保険の見直しで、思った以上に動くからだ。

数字が頭に入っていると、ヒマな日に焦らなくなる。「今月はあと何万売れば足りる」が即答できると、無駄な値引きを打たなくなる。

注意点

損益分岐点はあくまで「赤字を出さない最低ライン」だ。ここを目標にすると貯金も投資もできない。

自分の場合は、損益分岐点の1.3〜1.5倍を月の目標に置いている。これが「払うべきものを払って、来期に備えられる」ライン。

まとめ:損益分岐点を自分の数字で出す

一度自分の数字で計算してみると、目標売上の見え方が変わる。サロンPLツールに数字を入れれば、固定費と材料費率を変えながら分岐点の動きを試せるので、触ってみることをおすすめする。

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